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〇〇のやりかた ブログ

綺麗な線を引く方法?

#イラスト#ドローイング#体の使い方#描き方#書き方#絵画#道具#道具の使い方

思い通りに線を引けない、狙った大きさに描けない、ここ数年こんな悩みを聞く機会が多い気がしていました。
最初は(10年前)、デジタルツールの普及で、拡大縮小が簡単に出来るようになった為だとばかり思っていたので、「用紙設定のサイズを大きく拡大したり小さくしたりするのをやめて描くようにした方が、見所が散らないよ?」というようなアドバイスと、「線補正をやめた方がいいよ、そのためにアナログ画材で長く線を引くウォーミングアップなんかも役に立つよ」という極めて私たち的な人間ならこれで治るはず、、、というアドバイスをしていましたが、ごく最近になって、もしかしたら根本的な原因はそこに無いのかもしれないと気がついたので、ここに書いてみます。
あくまで、数年(飛び飛びで10〜20年)絵や工作を教える、デッサンを教える、という教える現場にいて感じた変化です。一概にこれが悪いという決めつけではなく、そういう可能性もあるよという事と捉えてください。

美大に行く人行かない人
絵を描く人間はたくさんいます。絵を生業にしている人間もたくさんいます。絵を生業にしている人間の全てが美大に行くわけではありませんが、(倍率の高い)美大に入る人間たちは毎日7時間ほど予備校で絵を描いて過ごします。入試のサイズが木炭紙サイズという大きさの画面が多いので、大体B2サイズくらいの大きさの画面に、毎日沢山描く、体の使い方が上手ということを覚えておいてください。
絵を生業にしていないけど、趣味で絵を描いている人間や、絵を生業にしているけれど美大受験で予備校に通わなかったなど、という方は、落書きや文字を描くときのシャーペンの持ち方で、絵を描いている可能性があります。沢山いろんな長さの線を描くこともなく、ノートの大きさやA4サイズの紙などが普段の書いているサイズではないでしょうか。こちらは小さな範囲に描くのを得意とすると覚えていて下さい。

大きな画面に沢山描くとは
ではまず毎日大きな画面に沢山描くとはどういうことが起こるのかを考えます。
そもそも、大きな画面は卓上に乗せて描くと画面にパースがかかってしまい、画面の上の方や下の方で形が歪んで見えてしまうので、イーゼルという道具に画面を立てて描きます。
椅子に座る時も姿勢が悪いと画面が歪んで見えてしまうので、なるべく姿勢をキープできるように座ります。
鉛筆など筆記具を持つ手を手首を画面につけて持つと、画面全体が見渡せないので、画面は腕を伸ばしてギリギリ触れるくらい離して置きます。そして描くときは肩甲骨を動かして線を引きます。そうしないと直線や曲線などがガタガタに歪んで、狙った線が引けないからです。
私は多浪したのですが、予備校に入って一年目くらいで、まだ10代なのに四十肩になる、ヘルニアになる、ぎっくり腰になるなど、体幹が鍛えられ筋力がつくまでに体を壊す仲間が多数現れます。私は空手をやっていたので体幹は強かったのでそこは大丈夫でしたが、腰をやってしまいました。
体を壊すくらいキツい量をこなす訳です。体に負担にならない描き方を体得している訳です。大きい画面に沢山描いても大丈夫な体の使い方、すなわち綺麗な線を引くための方法はこれなのでは?と私が考えているやり方は、先人たちの教えを無視してはいけません。ということに尽きます。後ほど出てきます。

途切れ途切れの線、一本の線で描けない
子供の頃、絵を描いていたら父から「チョンチョン途切れ途切れの線で描くのやめろよ。お前が描きたいものを描けなくなるぞ?そんな下手糞な線引くんじゃ無いよ。悲しいよ俺は。もっと一本の線できっちり描いてくれよ。」というようなことを言われて育ちました。私が小さい頃はファンシー全盛期で、破線で輪郭を描いて柔らかい色鉛筆タッチで塗ってある動物のイラストなどが可愛いくて人気がありました。子供心に可愛いから描いてみようと思った記憶があります。で、描いていたら最初の父からの言葉が、、、。その時は「可愛いイラストが描きたいだけなのに、大人はダサいのばかりやらせたがるの?」と思ってましたが、成長するに従い、父の言っていたことが大層理にかなっており、絵を上手くなりたい(観察眼を育てたい)場合に有効であることが、描き続けることによりわかってきたので、その後チョンチョン描くことはしていません。

お教室で見る悩める人たちの特徴と子供たちの鉛筆の握り方
最初に書いた、ここ数年見ている悩める人たちの特徴として、鉛筆がきちんと持てないという特徴があります。
きちんとした鉛筆(筆記具)の持ち方とは。
鉛筆の断面は六角形ですね。その一辺おきに親指と人差し指と中指の3本が触れており、親指と人差し指二本でしっかり挟んで持つことができる持ち方です。(毛筆でも同じように持つと思います。書道経験のある方は絵の上達が早かったりするのですが、構図の捉え方などもありますが、持ち方も既にできているので、どんな画材でも描くことができますね。)

私の鉛筆の持ち方


「なんで、そんな事言ってんだよ。」「そんな持ち方しなくったって、絵はかけるよ。」と思われると思います。もちろん親指と人差し指二本でしっかり持って描くことができる人なら、どんな持ち方でも、多少無理をした姿勢でも綺麗な線を引くことはできると思います。
ですが、この基本の持ち方ができていないということは、画面の隅々を把握してそこにバランスよく収めるという簡単で身近な基礎的訓練をしてないという感じです。

生徒さんで最近多いのはこの持ち方

鉛筆を握り込んで持つ場合、手首の先?小指のしたの方にある掌の一部(手のほっぺたという人もいるかしら)を画面や、紙、卓上に固定して、鉛筆の先とその固定した部分という2点で支えて描いています。当然手首を固定しているので引ける線もとても短くなり、1センチほどの長さの線をダブらせながら長い線を引いていく描き方になります。その場合、線の始まりから終わりまでを一気に引くことができないので、全体を把握して描くことがとても困難になります。

握って持った状態、こんな感じでチョン
握って持った状態、チョン、チョン、
握って持った状態、チョン、、、と線をつなげて描かないと描けない握り方です。私はこの状態でも肘を浮かせて描けますが、そもそも肩を動かして描く筋肉を持っていない場合出来ない描き方なので、今回はなるべく固定して描いています。

こんな修行して自分を追い込むくらいなら、絵を描くときだけ鉛筆の持ち方をきちんとした方がノンストレスのはずだと思います。ですが、この持ち方の人たち(大人)は「なるべく持ち方を変えた方がストレスが無くなりますよ?」とアナウンスしても、体に馴染んだ持ち方は、すぐには治らないのです。(なのでどの時点であれ、気がついた時点できちんと鉛筆を持つ方が上達が早いような気がします。)

アトリエの子供さんに多いのはこの持ち方

最近子供のアトリエに通って助手をしていますが、絵や工作が好きな子供が来ているにもかかわらず、鉛筆の持ち方ができている子供さんが少なくて驚いています。鉛筆をきちんと持ってる子供さんはグリグリしっかり大きく描けるので、自分の絵に満足してますが、鉛筆の持ち方ができてない子供さんは「どうでもいいし」「うまく無いし」などと言ってくるので、「え?もう?子供のうちから、このタイプの人って同じ悩みなの?」と気がついてきた次第。私も子供の頃塾に通ったりしていたので、ペンだこができてしまって同じ指で鉛筆を持つのが痛くて、ノートを取ったり宿題したりと文字を書く時の持ち方は少し握り込んで持つ癖があります。ですが、絵を描くときにその持ち方だと、狙った線が引けないので、(最近気にしてみるまで、無意識でしたが)握り込んで持つ方法で絵は描いていませんでした。

捉える範囲の大きい小さい問題
最初の方で私は、趣味や落書きの延長で描いてる方は小さい範囲に描く癖があるというようなことを書きました。捉える範囲の小ささや大きさが線を綺麗に引くことに関わってくると解っている方は少ないかもしれません。説明されれば「なんだそんなこと」という当たり前のことですが、言っても簡単に納得できないというプライドの壁の前に固まってしまう方も多いのでは無いでしょうか。
絵を描くことが得意な人はどうやってものを把握しているかというと、全体の中の割合を分割したり、形を単純化したりしてその比率を覚えて描いています。それって画面の中の大きな範囲を常に捉えていないと描けないし、大きな範囲の端から端までどの角度で線を引けばいいの?ということがわかっていて、鉛筆をきちんと持ち真っ直ぐ線が描けないと簡単に把握できないのです。余白を把握して描いている状態です。

きちんと持っている状態だと、手首のあたりを固定する必要がないので、鉛筆の角度で簡単な筆圧のコントロールをしています。画像のやや寝かした状態だと筆圧弱め。
きちんと持っている状態で、鉛筆を立てるぎみにすると筆圧がかかる
きちんと持っている状態でこのくらい立てるとかなり筆圧強めになります。そして手首はしっかり浮いていますが鉛筆の周りの紙のヨレ具合から、無理に圧抑がかかっている訳でなく、調節されている事もわかると思います。
握って持った状態で手首を浮かせてみましたが、鉛筆の先でしか支えられる場所がないのでものすごくグラグラしました。こんな難儀な状態で描いてるなんて、、、なんて大変な活動をされているのだろう。
きちんと持った状態で線を引くとこんな感じです。どこにも腕を固定せずに体幹で引くのでどこまでも長く引くことができます。
握って持った状態で、手首の近くを固定した状態で長く引こうとした線、頑張るとこのくらいの長さなら真っ直ぐ引けました。
きちんと持った状態の線の下に同じ軌道で逆から線を引こうとしている
きちんと持った状態、逆から線を引いたままその先を自由に動かしてみる
きちんと持った状態、曲線も直線も引くときに固定箇所でどこかに引っかかってしまうことがないので自由にニョロニョロできます。私は液タブ嫌いで板タブなのですが、デスクトップをみながらペン先を目で追う必要がないからかもしれないと思いました。普段の腕の可動域が広く筋力があるということかな。
握って持った状態で長く引いてみました。手首固定のせいでなんとなくヨロヨロ引けてしまう。

小さい範囲で捉えることしかできない人は、画面の中にバランスよくちょうど良い大きさで描くことがまずできません、その上で細かい情報を描き込もうとすると、より小さく部分で捉えてしまうので、どんどんバランスを失ってしまうということになります。
人間の目玉は、見ているところしか見えないというとても視野の狭い目玉の作りになっています。どうしても狭い範囲しか見られないし、そこしか見えないという作りなので、周りも一緒に見る努力を怠ると、大袈裟にいうと一生大きい範囲で物を捉えて見ることはできないと思います。狭い範囲を見ないようにするのに、手を大きく早く動かして、見ている範囲を無理やり広げて、大きく把握するように行動する、クロッキーをする。というのも大変有効ですが、そもそも鉛筆をきちんと持つことができないと手を固定することなく中空で動かし続けることは難しく、画面に対して大きく早く脳を介さず絵を描く経験はなかなか独学ではやりづらいかなと思います。
手っ取り早いのは鉛筆の持ち方を変えてみることなので、身に覚えのあるかたは持ち方を変えてみても良いのでは?と思っています。

最後に
もっと色々書きたいことがありますが、それは追々やるとして、今回はとりあえず鉛筆の持ち方をきちんとさせたいおばちゃんというキャラで行こうと昨日子供たちと話していて思ったので、その勢いのまま「鉛筆きちんと持ってみようよ」と書きました。
沢山線を引くことを勧めるプロダクトデザイナーのSNSの投稿や、絵を描く前にクロッキー帳に沢山線を引いてウォーミングアップしましょうというイラストレーターの投稿を見て、「そういうのは日常的にやるよなぁ、、、でも線が綺麗に描けない人ってそういうこちらサイドと違うやり辛さが伴ってる気がする」と感じていたので、まず、こちら側の人間は鉛筆きちんと基本の持ち方やで?と当たり前すぎる誰も言わないこと言ってみました。

※今回の画像は左手でスマホを持って右手を撮影したので、お見苦しい点が多いと思います。ですが、スマホの画面越しでこんなに自由に腕が動かせるのか?という所に着目して頂けると、なんとなく味わい深いのではと思います。

余談
鉛筆の持ち方は箸の持ち方と同じだということを、箸をまだうまく持てない子供たちと話していて思い出しました。
私「お箸を鉛筆と同じ持ち方で、一本持ったら、もう一本を親指の輪っかに手前から通して持つとお箸の持ち方だよ?」と教えていたら、
子供「そうなんだよ。知ってる。でも私まだ鉛筆の持ち方も上手にできてないことに気がついたから、そこからなんだよ!」
私「なるほど、それは大変良い心がけですよ。鉛筆しっかり持つことができると、絵が描きやすくなるしね。」
子供「そう!お箸も持てるようになるしね。いいことづくめだ。」
お箸がきちんと持てるなら、鉛筆きちんと持てるのでは?同じです。ふふふ。

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